『マハン海上権力史論』 アルフレッド・T・マハン

 

 書籍概要

「シーパワー理論」を提唱したマハンの代表作。

 

感想

本書は1890年刊行と古いものの普遍性があり、海洋の使用およびコントロールの重要性を主張した点において地政学上のマイルストーンと言える。マハンはシーパワーに影響を及ぼす主要素として「地理的位置・自然的形態・領土範囲・人口・国民性・政府の性格」を挙げている。第1章ではこれらの定義づけを行ったのち、イギリスなどの主要国を例に分析していく。その中でも政府の性格や政策の重要性を強く感じずにはいられない。いかに地理的・地形的に優位でもそれを生かす政策をできるか否かで栄枯盛衰が決まる。特に島国である日本には今もなお多くの示唆を与えてくれると思う。

一方で第2章以降はより具体的な歴史に基づいてシーパワーの重要性が説かれるが17、18世紀の帆船時代がメインであり、そのまま今日の世界情勢に当てはめることは難しい。これについてはマハン自身が述べるように類似点よりも相違点に注目して分析する必要があるだろう。また独特な言い回しにより読みづらいため、シーパワーの概要を知りたいのであれば第1章のみでも十分だろう。いずれにせよ地政学を学ぶ者は読んで損はないだろう。