『雨夜譚 渋沢栄一自伝』 渋沢栄一

 

 書籍概要

幕末から明治にかけて活躍した実業家 渋沢栄一の自伝。

 

感想

渋沢栄一の『論語と算盤』は既読だったが、2021年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公ということで本書を読んだ。このブログを書いている6月22日時点では一橋家の勘定組頭に抜擢される第19回までが放映されている。『雨夜譚』では渋沢栄一の半生を扱っている都合上、感想内でネタバレは避けられない。大河ドラマを前知識なしで見たい方は以下の内容を読み飛ばすことを推奨する。

 

本書では渋沢栄一の半生を五章に分けており、第一章は豪農の長男として生まれ、尊王攘夷の志士として横浜焼き討ちを試み、断念するまでを描く。この間約40ページながらも話の端々から若くして賢く、また血気盛んだったことが分かる。第二~三章では一転して一橋家へ仕官し、慶喜の元で頭角を現すまでが、第四~五章ではフランスから帰国後に明治政府へ出仕し、退官するまでが数々のエピソードを交えて語られる。

 

渋沢栄一は倒幕の志士、徳川家の家臣、明治政府の官僚と目まぐるしく転身をする。ページにして約200ページなのだが、明治政府を退官したのが33歳の時なのだから驚きだ。当時としては長寿の91歳で亡くなったことから考えると退官まででやっと生涯の三分の一となり、実際のところ本書では語られない実業家時代の方が長いのだ。実業家時代については併収の「維新以後における経済界の発達」で触れられているものの、500もの会社の設立に関わったことに鑑みるとあくまでごく一部分でしかなく、少々物足りない。大河ドラマでは実業家時代をどう描くかが楽しみだ。