『マッキンダーの地政学 デモクラシーの理想と現実』 H・J・マッキンダー

 

書籍概要

現代地政学の祖 マッキンダーの著作。第一次世界大戦終結した1919年に発表され、国際連盟を軸としたデモクラシーの今後の課題を地理的な要因から読み解く。

 

感想

ここ数年、国内でも地政学ブームが起きており多くの書籍が出版されているが、大半が本書でマッキンダーが提唱する「ハートランド論」をもとにしている。そのため地政学を本格的に勉強する上では必読の書だと思う。

1919年発表ということもあり当時の各国の力関係が頭に入っていないと読むのに苦労するが、歴史好きとしては当時の予想がどの程度当たっているのかを確認しながら読むとなお一層楽しめて一石二鳥だった。特に第6章ではドイツの将来的な東欧進出の可能性を予見し、ロシアとの間に緩衝国の必要性を訴えるなどマッキンダーの慧眼には目を見張るものがある。(実際、ナチス・ドイツは「東方生存圏」に基づきポーランド侵攻独ソ戦に踏み切っている)

 

本著でマッキンダーは「ユーラシア大陸の内陸部」をハートランドと定義した上で「東欧を支配する者はハートランドを制し、ハートランドを支配する者は世界島を制し、世界島を支配する者は世界を制する(P177)」としている。ではその理論は100年経ち、航空機や大陸間弾道ミサイルが発展した現在の世界情勢にも当てはまるのだろうか。

ハートランドにあたる地域は現在ロシアが支配しており世界制覇とまではいかないものの、超大国アメリカに対抗できる数少ない国であることは間違いない。また旧ソ連諸国をはじめ、その影響力は今なお大きい。今後、戦禍を繰り返さないためにもロシア周辺に位置するEU・日本がアメリカと連携して、その影響力を抑え込んでいくことが重要だろう。