『恐竜はなぜ鳥に進化したのか 絶滅も進化も酸素濃度がきめた』 P・D・ウォード

 

 

書籍概要

カンブリア紀大爆発から現代に至るまでの進化の謎を酸素濃度に注目し紐解いていく。

 

感想

タイトルに惹かれて購入したのだが恐竜に関する記述は全400ページ中約100ページなので期待外れだった。原題は“Out of Thin Air(直訳すると「薄い大気の中から」)”で内容と合致しているので、読者が手に取りやすいようにセンセーショナルな邦題にしたのではないかと勘繰られても仕方がないと思う。

 

肝心な内容だが「生物の進化・絶滅は当時の酸素濃度に影響を受けているのではないか」という考えにのっとり、いくつかの仮説が展開されていく。例えば「カンブリア紀に最も栄えたのはなぜ節足動物なのか」という謎に対しては「多数の体節の下に大きな鰓を持つことで泳ぐ際に抵抗を少なくしつつ、海中の薄い酸素を効率的に取り込んでいた」として大胆な仮説を提示している。他にも酸素量の増加と陸上進出を関連付けて考えるなど興味深い内容となっている。

ただし全ての事象を酸素濃度で説明しようとしている節もあり、鵜呑みにするのは危険だと思う。2010年出版であり日々定説が変わっていく世界であることを念頭において読むことが必要だろう。