『大本営参謀の情報戦記 情報なき国家の悲劇』 堀栄三

 

 書籍概要

日本軍の情報に対する意識の低さから敗戦に至った太平洋戦争を情報参謀という立場で経験した筆者が独自の視点で振り返る。

 

感想

インターネットが普及し情報が氾濫する現代社会において、これほど示唆に富む本はないだろう。ロングセラーとなり読み継がれているのも納得できる。しかしそれは同時に戦後70年以上経っても、日本人の情報に対する意識が低いことを指し示している。

 

筆者の情報に対する信条は「枝葉末節にとらわれないで、本質を見ること」という土肥原将軍の言葉に立脚している。そして情報は疑うことを第一としており、楽観的思考を排し冷徹に見る。それ故に台湾沖航空戦の大戦果報告を否定する電報を打てたのだろう。

 

本著では敗戦まで日本最大の組織だった日本軍が情報に対する意識の低さにより失敗する話が具体例とともに語られる。まえがきにもある通りこれらの失敗談は現代の企業にも通ずることがあり大いに参考になるだろう。もちろん、太平洋戦争をメインとしているため日本軍の意思決定のあり方の観点から読んでもためになる。どちらの場合も戸部良一らの『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』を併せて読むことで企業等の組織がどうあるべきかが明確になるだろう。